ようやく家に辿り着いたのにドアを開ける鍵がみつからない…そんな失敗は昼間よりも夜に起こりやすいのが特徴です。薄暗い街灯の下でカバンの中を探ったり何度もポケットに手を入れてみたり、焦れば焦るほど思考回路が停止してしまいます。鍵の紛失は誰にでも起こるミスですが、特に厄介なのがマンションの鍵を紛失するケースでしょう。防犯リスクが高まるのはもちろん、自分だけでなく他の住人に迷惑をかけてしまう恐れもあります。しかも、ひと口にマンションといっても賃貸・分譲・オートロックといったタイプによって適切な対処法が異なるのも難点。そこで今回は、マンションの鍵を紛失したときの対応手順をはじめ対処にかかる費用の相場や自腹負担を抑える方法、3つの住宅タイプそれぞれの注意点についてご説明します。

1.マンションの鍵を紛失した場合の対応手順

ふと気づいたらマンションの鍵が見当たらない…そんな時は、誰もが焦ってパニックに陥るでしょう。最後に鍵を見た場所を思い返してみたり立ち寄った場所に問い合わせてみたり、考えれば考えるほど焦りがエスカレートしていきます。ですが、そんな時ほど冷静に対処するのがトラブルを解決する近道です。まずは、マンションの鍵を失くしてしまった時の正しい対応手順についてご説明しましょう。

1-1.手順1:警察に届け出る

自分の行動を振り返って探してみても見つからない時は、賃貸であろうと分譲であろうと警察に届け出ることが最初のステップです。大げさに思える人も多いでしょうが、鍵の紛失は常に防犯上のリスクを伴います。特に、外で落とした可能性が高い場合は、他の住人にまで被害が及びかねません。また、運良く拾った人が警察に届けてくれていたらその場で解決できますし、後から鍵が届いた場合も連絡がもらえるので精神的な安心材料にもなります。警察に鍵の紛失を届け出る時は、失くした場所はもちろん自宅や会社からの距離を考慮する必要はありません。紛失に気づいた場所から最も近い交番もしくは警察署の窓口で、「遺失届」を提出しましょう。
遺失届には、氏名や連絡先といった持ち主の情報に加え、ブランドや形状など鍵の情報も細かく記入します。中でも、重要なのが、紛失した時の状況です。できるだけ正確な日時や場所を記載しておくことで、見つかった時の連絡が早くなる可能性があります。遺失届が警察に受理されると、見つかった時の受け取りに必要な「受理番号」が発行されますので、失くさないように大切に保管しておきましょう。さらに、下記で詳しく説明しますが火災保険の中には鍵を紛失した時にかかった費用をカバーしてくれるタイプがあります。ところが、受理番号を失くしてしまうと保険が適応されず、費用を自腹で負担しなければなりません。ちなみに、子供が外出先でマンションの鍵を失くしてしまった時は、警察だけでなく学校や学童保育所、習い事の教室などへも報告しておいた方が良いでしょう。

1-2.手順2:スペアキーの有無と場所を確認する

2番目に行うべきなのは、トラブルの対処方法を明確にするためにスペアキーの有無と状況を確認することです。マンションの鍵を紛失した時の対処法はスペアキーがどこにあるかによって全く違ってきますので、誰かに鍵を開けてもらう前に明確にしておく必要があります。唯一のスペアキーが鍵のかかった自宅の中にある、もしくは近所に住む人に預けているが一時的に連絡が取れないという場合は、とりあえず「開錠」さえ依頼すれば一気に解決します。一方、そもそもスペアキーを持っていない場合や預け先が遠くてすぐに入手できない場合は、「開錠とスペアキー作成」という2つの問題を解決しなければなりません。ただし、賃貸マンションに住んでいる人がスペアキーを1本も持っていないからといって即断即決するのは禁物です。まずは、管理会社や大家さんが管理しているスペアキーを貸して貰えるかどうか問い合わせてみましょう。

1-3.手順3:大家さんor管理会社に連絡する

警察への届け出とスペアキーの状況確認が終わった後の対処法は、賃貸か分譲かによって違ってきます。賃貸マンションの場合は大家さんや管理会社へ、分譲マンションの場合は基本的に自己判断で対処するのが一般的です。ただし、規約の内容によっては事前に管理会社への連絡が義務づけられている分譲マンションもあります。家の中に入れずに規約の内容が確認できない場合は、念のため管理会社へ連絡しておいた方が無難でしょう。

1-3-1.賃貸マンションの場合は貸主の指示に従うのが基本

賃貸マンションの場合、どんな対処法で解決するのか決定権を持っているのはあくまで大家さんや管理会社です。そのため、貸主の同意を得る目に借主が勝手に鍵を新しく付け替えたり壊して開錠したりすることはできません。まずは、大家さんや管理会社に連絡して鍵を紛失したという現状報告を行った上で、その後の対応を相談して指示に従うのがルールです。確かに、スペアキーが家の中にある人や急いで持ち出したい物がある人なら、今すぐ駆けつけてくれる鍵業者に開錠を依頼したくなるのも当然でしょう。だからと言って、自己判断で勝手に動いては後日トラブルに繋がりかねません。契約違反や多額の費用請求などを避けるためには、必ず鍵業者を呼ぶ前に大家さんか管理会社に連絡するのがセオリーです。

1-3-2.貸主によって対応パターンはさまざま

大家さんや管理会社の対応は、必ずしも同じとは限りません。中には、スペアキーを持って駆けつけてくれたり無料のサポートサービスを手配して鍵の開錠から交換まで親切丁寧に世話してくれたりする大家さんも居ます。例えば、マンションを何件も所有している大手の場合は、提携している鍵業者に連絡するよう指示されるケースが多いようです。その反面、自分で鍵業者を探して対応するように指示されることも少なくありません。鍵の紛失に気づくのは夜間の帰宅時が多く、特に深夜に発生した場合は相手と連絡を取るだけでも大変です。大家さんや管理会社とコンタクトが取れない時は、何度も着信履歴を残して誠意をアピールしつつ自力で鍵業者を手配するのが一般的な対処法ですが、鍵の交換まで依頼するのは禁物。ポイントは、開錠とスペアキーの作成までにとどめておく事です。翌日の朝に改めて連絡し、事情を説明した上で仕方なく自分で対処したと報告しましょう。

1-4.手順4:加入している火災保険をチェックする

賃貸であろうと分譲であろうと、最終的に自分で鍵業者へ依頼する場合は事前に火災保険や家財保険の内容を確認しておきましょう。必ずしも保険が適用されとは限りませんが、補償内容に鍵交換の費用が含まれていれば全額もしくは一部の費用を保険会社が負担してくれます。また、分譲マンションを購入した時の契約書に鍵交換の費用が初期費用に含まれる旨の記載があれば、費用面で大きなメリットになるでしょう。

1-4-1.紛失時の費用は借主が負担するのが原則

自分の所有物である分譲マンションはもちろん、賃貸マンションであっても鍵を紛失した時に発生する費用は住んでいる借主が負担するルールになっています。なぜなら、鍵の紛失はあくまで借主の過失とみなされるからです。つまり、大家さんや管理会社が鍵の交換費用を負担するのは入居者が入れ替わる時だけなのです。とは言え、鍵の開錠や交換にかかる費用は職人の技術に左右されるため、業者によってかなりの開きがあります。後から高額な費用を請求されるようなリスクを避けるには、鍵業者が作業を始める前に費用の総額を確認しておくのが鉄則です。

1-4-2.火災保険に鍵紛失の付帯サービスがある場合も

確かに、賃貸マンションであっても鍵の紛失によって発生する費用は借主の自己負担になりますが、例外として自腹で払わずに済むケースがあります。まずは、入居時に加入した火災保険に「鍵の紛失に関する特約」が付帯されているか確認してみましょう。保険でカバーできる範囲や条件は契約の内容によって異なりますが、指定の鍵業者に依頼することで無料もしくは割引サービスが利用できるケースも珍しくありません。ただし、たとえ特約つきの火災保険に加入していたとしても、基本的に遺失届の受理番号がなければ手続き自体ができませんので注意が必要です。また、加入している火災保険の内容が分からない、もしくはこちらから連絡をしなかった場合は費用の全額を自腹で負担しなければなりません。

1-5.手順5:鍵業者を呼ぶ

警察への届け出から火災保険のチェックまでを済ませたら、鍵業者に依頼する時の具体的な手順について把握しておきましょう。対象となるのは、本人、または親族が所有する分譲マンションもしくは賃貸マンションの鍵を自分で対処するよう指示された人です。

1-5-1.鍵業者に依頼するときに必要なものは?

鍵業者に開錠の依頼をするときは、原則的に住居者本人の顔写真が載った身分証明書が必要です。中には、盗難の場合に限って保険証やクレジットカードなど複数の身分証で対応してくれる鍵業者もいますが、通常は到着したスタッフに顔写真と住所が確認できる運転免許証やパスポード、学生証や敬老手帳などの身分証明書を提示しなければなりません。バッグごと盗まれて手元に身分を証明する書類が一つもない場合は、「警察官の立ち合い」という裏ワザが有効です。遺失物の届け出を出すときに立ち合いに協力してもらえるか、窓口の警察官に相談してみましょう。また、賃貸か分譲かに関わらず鍵の修理はマンション内の共有エリアで行われます。不要なトラブルを避けるために大家さんや管理会社の許可を求められた場合は、鍵業者の指示に従って対応しましょう。

1-5-2.鍵業者に依頼すると費用はいくらかかる?

鍵業者に開錠を依頼したときの費用は5000円くらい、鍵穴だけを手掛かりにスペアキーを作成する場合は1万円くらいが相場です。とは言え、鍵の扱いに関する料金は職人の技術料ですから相場はあってないようなモノ。一般的なギザギザタイプの鍵なら安く済むケースがほとんどですが、防犯性の高いディンプルキーの場合は作業の難易度が上がる分、費用も高額になりがちです。安心して作業してもらうには、鍵業者に電話した時に鍵のタイプを説明した上で見積金額を確認しておきましょう。

2.オートロック付マンションの鍵を紛失した場合の注意点

戸建ての個人住宅とオートロック式の集合住宅とでは、リスクの程度が全く違います。オートロック式の集合住宅に住んでいる人が鍵を失くしてしまうと、本人だけでなく住民全員が防犯リスクに晒されてしまうのです。

2-1.オートロックが集合キータイプの場合は大問題になることも

自宅の鍵を紛失したら誰もが慌てますが、シリンダー式の集合キータイプの場合は尚更でしょう。マンションの集合キーは、個人の部屋だけでなくオートロックの集合玄関にも使えるマスターキーの役目も担っています。マンションによってはトランクルームや駐車場などにも使えますから、住民全員にとって防犯上のリスクは甚大です。もし、犯罪者に拾われてしまったら、簡単に共有スペースまで侵入されてしまいます。

2-2.管理会社or管理組合に連絡と相談をする

オートロック式の集合キーを紛失した場合、その後の対応は管理会社の方針や管理組合の話し合いによって決定されます。そのため、賃貸か分譲かに関わらず紛失の事実を管理会社や管理組合へ報告しなければなりません。失くしてしまった人にとってはうっかりミスですが、防犯上の落ち度があるのも事実。穏便に済ませるためには、被害者意識を持たずに反省していると相手に伝わるように対応しましょう。

2-3.多額の費用を請求されてしまった場合の相談窓口は

稀なケースではありますが、全室の鍵を交換するために100万円を超える費用を請求されたケースも報告されています。確かに紛失した本人の責任と言われればそれまでですが、あまりにも高額な費用負担を無条件に受け入れる訳にもいきません。まずは、大家さんや管理組合などと交渉の場を設けて誰にでも起こり得るリスクだと説得してみましょう。相手の理解が得られれば、全額負担から一部負担へと軽減できる可能性が開けてきます。もし、相手があまりにも強硬で説得が難しい場合は、消費生活センターや弁護士といった専門家に頼ってみるのも一つの方法です。

3.マンションの鍵は交換したほうがいい?

賃貸マンションでは、鍵を紛失した時の対処法として新しい鍵に交換するよう指示される傾向があります。鍵を失くしてしまった人は、業者に開錠してもらい鍵穴からスペアキーを作成してもらった段階で安心しがちです。ですが、一度失くした鍵は誰の手に渡っているのか検討もつきません。たとえ失くした鍵が見つかったとしてもスペアキーを作成されたリスクがある以上、最終的には鍵穴自体を新しく交換した方が安全です。1万円程度の費用で安全が買えるなら、むしろ安上がりと言えるでしょう。

4.マンションの鍵を紛失したら正しい手順で鍵業者に相談

どんなに注意深い人でも、些細なミスを完璧に防ぐことはできません。だからこそ、マンションの鍵を紛失してしまう人が後を絶たないのでしょう。確かに、マンションの鍵を紛失するということは他の住民も巻き込む事態に発展し兼ねない失敗ですが、気付いた後の対応次第でトラブルの拡大を最小限に抑えることは可能です。マンションの鍵を紛失した時は、正しい対処法を踏まえつつ鍵業者の助けを借りて適切に対処しましょう。